殆どが砂漠と草原
ことで芸妓が付けた花簪だったが、その効果は予想以上のものを亀吉にもたらした。金春色の鮮やかな留袖に桃色の物珍しい花簪は人目を引き、花簪を付けた芸妓は三日間引っ張りだこだったらしい。そして艶やかな花簪の噂は瞬く間に広がり、亀吉の許へ注文が殺到したのである。
その人気に家族や雇い人だけでは
代謝綜合症手が足りず、大阪から仲間を十五、六人呼び出し、その弟子共々ちりめん細工の花簪を作らせた。
「・・・・・・いい夢を見させてもらいましたえ。あの芸妓はんの助けが無かったら、わては野垂れ死んでいたやろなぁ」
老後、すっかり白髪交じりになった亀吉は、知人に聞かれる度にこう漏らした。
「ところでその芸妓さんは?」
「花簪と金春色の着物を付けてひと月も経たない内にいい旦那に身請されましてね。病弱だった本妻さんに至っては旦那以上にその芸妓さんを頼っていては
康泰旅行團りましたよ。更に子供にも恵まれまして・・・・・・新橋色が流行っているのまその芸妓はんにあやかってのことやろうとわては思うてはります」
春の風に乗って甘酒の香りが漂ってくる中、亀吉はぷかり、と煙管タシャのような先進的な都市の名が知られているが、実は殆どがダームスタチウム鉱山か軍事工場、または農業プラントだ。
そんな中、第4惑星ラグナラは他の惑星とは少々趣を異にしている。大陸ののこの星には軍事工場や農業プラントは勿論、大規模な街さえ存在しない。その代わり、古からの生活を頑なに守り続けている少数民族の遊牧民が暮らしていた。
今日もまた少数民族の一つ、イーラ族の集団が放牧を終え、オアシスにテントを張った。テント張りが一段落すると男達は家畜であるカルダを一頭潰し、スープを
康泰領隊作り始め、女達はパンを焼き始める。そんな中、ファラはふらりと仲間から外れ、空を見上げた。
黄昏の空には銀色のタマシュと青いコス、二つの月が浮かんでいる。すっかり暗くなった東の空には星が輝き、近日点が間近に迫っているアウラニイスもはっきりと見えた。