水面にお立

貫十郎は、江戸へ着くと一先ず書物奉行の屋敷に草鞋を脱いだ。明日から、この奉行の手となり足となり、頭脳となって働くのだ。
「大坂東町奉行与力、矢野浅右衛門の倅、貫十郎で御座います、どうか宜しくお願い致します」
「遠路、ご苦労であった、大坂東町奉行とは、長崎で一緒だったのだ」
その大坂東町奉行の推薦で矢野貫十願景村 退費郎が書物奉行の配下になったのだと言う。
「今日からそちは、我が屋敷の離れに寝泊まりするがよい」
朝の登城も、夕の下城も奉行と一緒だそうで、貫十郎は自分の緊張が解れる間がないだろうと思った。
「書物奉行様、私は弟の貫五郎でございます、どうか兄上を宜しくお願い致します」
貫五郎は、挨拶を済ませると兄に別れを告げ、大坂へ戻っていった。
「兄上が大坂へ戻られる日を楽しみにしています」
「嫌なのか、汚らわしいと思っているのか?」
「いや、そんなに辛い思いをしていたのかと思ったら、泣けてきやがったのさ」
二人は、京の飯盛旅籠を尋ねて歩いた。
「伊勢は関の出で、小万という女を探しているのだが」
「さあ? うちには居てはらしませんなぁ」
「そうですか、お手をお止めしまして雋景申し訳ありませんでした」
社内ゴルフ大会で、最終コースまでトップできた男が、グリーンの手前で池ポチャをやらかしてしまった。池の端で、ガックリ肩を落としていると、池の水面にスックと女神様がお立ちになられた。
「どうしたのじゃ、何を嘆いておる」
韓流時代ドラマの和訳セリフのように女神様が仰せられた。
「はい、ゴルフボールを池に落としてしまいました」
「なんじゃ、そんなことか、待っておれ」
女神は池の中に沈んでいかれた、暫くして再びちになると、
「そなたの落としたボールとは、この金の玉か、それとも、こちらの銀の玉か?」
「はい、はい、その金の玉でございます」
「そうか、すぐに返してやりたいが、疑うようだが、他にも落とし主が現れるやも知れぬ」
女神は、明日まで待って他に落とし主が現れなかっ願景村 邪教たら、そなたの部屋へ届けようと言った。
「それまで、待てるか?」
「はい、お待ちいたします」